2008.11.14.Fri / 18:27 
さて、レギュラー版連載300話達成の興奮も落ち着き、また普段通りに戻ったゲンさん(『解体屋(こわしや)ゲン』)感想です。

連載200話達成の時には、直前に石井さだよし先生の急病による休載があったので特別な事が何もなかったのは仕方ありませんが、先週も、第300話の記念として期待していたプレゼントなどの企画が何もなかったのは残念です(色紙プレゼントくらいはあると思ったが、結局増ページと「小料理みな子」のみな子さんがラストに特別ゲストとして出演した事くらいだった)。

まあ、一時的なプレゼントよりも連載が長く続いてくれる事の方が嬉しいので(くじ運無いからプレゼントに応募しても当たらないしね)、石井先生と星野茂樹先生には、これからもゲンさん達の活躍を書き続けて欲しい、そして「週漫」編集部は、これからも雑誌の柱としてゲンさんを大切にして欲しいと思っています(今回、掲載順位が下の方なのが気になったが。ここ数か月ほど掲載順位が三番より下に落ちた事がなかったのに……)。

それでは、第301話の感想とまいりましょうか。

いつもはずぼらな自分ですが、今日は思う所あって一気呵成に書き上げました(でも「▽Open more.」前のイラストは使い回し……ちなみに勢いで「シューマンパズル」とアンケートの回答も既に書き終えました)。

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『解体屋ゲン』
第301話「日本の財産」
(ストーリー)

先日の映画会社の創立記念映画撮影における爆破解体の仕事をゲンさんに依頼した(詳しい経緯は第298~300話に)「紅熊建設」では、社長の平井が、部下からの子会社である不動産会社「レッドベア不動産」が破産したという報告を聞いて驚いている。

同じ頃、ある作業着専門店の前で買い物袋を抱えて機嫌良く店を出て来たゴンと鉢合わせたゲンさんは、久し振りに会った彼が羽振りが良さそうなのに気付き、何か疚しい事でもしているのかと訊くが、彼は逆にゲンさんに仕事を廻すからいい働き手があったら紹介してくれと言い、ケータイの着信があったのをしおに上手く追求を逃れる。
そんなゴンの後ろ姿を見送っていたゲンさんのケータイにも着信があり、電話に出ると慶子さんから紅熊建設が倒産するかもしれないと知らされる。

ゲンさんが紅熊建設に駆け付けると、ビルの前には債権者らしい数人の男が閉ざされたドアを乱暴に叩きながら事情説明を求めて怒鳴っている姿と、それを撮影しているマスコミのカメラマンらしい男がいた。
中に入る事も出来ず立っているゲンさんは、背後から自分を呼んでいる声に振り返ると、そこには以前面識のある平井社長の部下(肩書きは不明だが専務か何かか?)が立っており、社長が待っているから来て欲しいと声を潜める彼の車で、平井社長の自宅に案内される。

平井社長の自宅に着き部屋に案内されたゲンさんは、彼の顔を見るなり畳に手をついて深々と頭を下げる彼に、先日仕事で会った時には倒産なんて話はなかったが隠していたのかと訊くが、説明によると、倒産したのは子会社であるレッドベア不動産だけだが、紅熊建設も銀行の融資がストップした以上倒産は時間の問題だと言う。
そして平井社長は、先日ゲンさんと一緒に仕事をした事で自分の弱さを知る事が出来たという意味の事を語り、こんな時だからこそ金の貸し借りはしっかりしたいと言って、支払いは遅れるが必ず先日の仕事の報酬を支払うから待っててくれと言う。

そこへ平井社長の部下が、社長に面会を求めている客が来ている事を困惑しながら伝えるが、彼を押しのけるように一人の男が部屋に入って来る。
アポイントメントもなく押し掛けた事を悪びれもせず入って来たその男は、自分は「ベストハード・インベストメンツ」の社員・勝野だと名乗ると、早速平井社長にレッドベア不動産が所有する不動産の自社への売却を申し出る。
だが勝野が提示した市況価格の十分の一という売却価格にゲンさんは驚き、平井社長も話にならないと突っぱねるが、勝野は紅熊建設の財務状況を既に把握しているらしく、この話を呑めば自己資本を切り崩さず不良債権を処分出来る、銀行の融資が再開され紅熊建設は倒産をまぬかれる事が出来ると言い、手付け金の五千万円を彼の前に広げ決断を迫る。

平井社長は、五千万円という現金を前に、確かにこのまま何もせずにいたら紅熊建設は連鎖倒産してしまうと考え心が動きかけるが、勝野の会社がハゲタカ投資ファンドだと気付いたゲンさんの、こんな奴等の口車に乗るなと言う一喝で我に返る。
そしてゲンさんは、社長の弱みにつけ込んで札束で横っ面を叩いて金を毟り取ろうとする勝野のやり方が我慢出来ず強い口調で攻めるが、勝野は戦法を変え、不動産の買収額とは別に融資という形で平井社長の個人口座に振り込むと言って懐柔しようとする。

自分には社長として社員を守る義務があると話に乗りそうになった平井社長だが、先ほどのゲンさんの一喝を思い出したらしく、意を決した表情で勝野に、この話は断ると強い調子で言う。
そしてゲンさんは、平井社長の言葉を聞いてハゲタカの本性を現し彼を罵る勝野に対し、お前等投資家が世の中を引っ掻き廻したせいで世界中が苦境に喘いでいるじゃないか、人は金の為だけじゃなく人の為に働くのだと強い調子で言い、平井社長も、たとえ紅熊建設が倒産したとしても投資ファンドへの売却はしないから帰ってくれと言う。

そこに部屋のふすまが開き、部屋に入って来た平井社長の父親である会長が、息子の決断を褒めると共に勝野に対して失せろと一喝し、息子である社長に、地元の信用金庫が繋ぎ融資をしてくれる事になったから紅熊建設は自主再建の道を目指す事になる、会社の規模は縮小されるがこれからも地道に努力して行けと諭す。
そしてゲンさんは、まだ帰ろうともせずに愚痴る勝野に五千万円のアタッシェケースを突き返して追い返す。

それから三日後、平井社長は紅熊建設を訪れたゲンさんに、紅熊建設は倒産をまぬかれそうだが本社ビルを売却し社員を現在の半分以下にしなければならない事を話すが、この不況下で再就職もままならないのに解雇せねばならない社員の今後が気掛かりで浮かない顔をしている。
それを聴いていたゲンさんは、「就職先」という言葉で何かを思い出したらしく、先日会ったゴンを呼び付け、あの時彼が言っていた仕事についての話を訊く。

ゴンによると、その仕事先は建設ラッシュに湧くドバイの、日本企業が直轄している建設現場で、賃金は安いが住居と食事付きの上、英語も勉強出来て技術も磨け、当人の努力次第ではもっと上も目指せるという彼の言葉を聴いたゲンさんも、確かに日本の土木作業技術は世界一だから何処の現場でも重宝されるだろうと同意する。
そしてゴンはゲンさんの言葉に続けるように、日本の労働者は技術面だけでなく精神面でも頼りにされていると言い、それはどういう事かと訊く平井社長に海外での日本人労働者の美点を語り、自分は日本の財産は「人」だと思っていると言う。
ゲンさんも、何時になく立派な事を言うゴンの言葉に同意し、ちゃんとした人間を育てて行けば未来に希望が持てるのだと言い、それを聴いた平井社長も、この件を社員に伝え、将来の日本を支える人材を育てる為に彼等を送り出してやろうという意味の事を言う。



(感想)
……この際だから正直に言いますが、私はこの作品を読んでいて、時々あまりにも現実世界の景気などに即し過ぎているきらいがある星野茂樹先生のシナリオに付いて行けないと感じる時があります。

確かに、ドリーム小説まがいに主人公とそのシンパだけに都合良く話が転んで行く作品(敢えて名は挙げないが「週漫」にもその手の奴がゴロゴロしてるよね)に比べれば誠実なのかもしれませんが、こんなに世知辛い世の中なのにフィクションの中までも世知辛いストーリーを読むのは遣り切れないというのも正直な気持ちで(これが一読者にしか過ぎない自分の我儘だという事は重々承知していますが)、折角の300話達成エピソードだった前回の第298~300話「一発勝負」の感想を書くのに腰が重い理由も、「創立百周年を迎えた映画会社が、銀行の管理下による再建計画の為に撮影所を売却」とか「撮影所解体後の更地工事を担当する建設会社(今回登場の紅熊建設)も三期連続赤字」という設定の時点で気持ちが萎んでしまったのが大きな理由だったのです(もう少し気持ちが落ち着いたらこのエピソードの感想記事かストーリー紹介をアップするつもりですが)。

そして今回も、話の発端が紅熊建設の子会社の倒産だったので、「またかよ、いい加減にしてくれよ」という気持ちで読み始めましたが、読み進んで行く内にその気持ちが変わり、前向きな気持ちで物語を受け止める事が出来ました。

失敗を恐れるあまりに決断力に欠ける性格そして経営手腕を父親である会長に心配されていた平井社長が(その辺の事情は第298話『一発勝負(前編)』に)、映画撮影の現場で共に仕事をしたゲンさんの姿から彼の強さを感じると同時に対照的な自分の弱さを思い知った事で、自分も彼のように強くならなければと考え、この会社の危機につけ込もうと擦り寄ってきたハゲタカ投資ファンドの甘言を突っぱね、たとえ規模は縮小されても会社を守り抜こうと決意する姿は感動的でした。

現実世界では、日本の財産を外国に売り渡して平然としているハゲタカどもに都合の良い展開が殆どなんだろうけど、自分はこのくだりを読んで、これは「たとえフィクションの中だけでも、頑張って生きている人間には報われて欲しい」と思っているであろう星野先生からのメッセージだと受け止めました(お願い星野先生、「オレはそんなメッセージ発信してないぞ」なんて言わないで!!)。

そして今回の感想記事のタイトルですが、いつもは内容に合わせたタイトルを付けていますが、今回は、ここ数日心を痛めているある事柄を踏まえ、この不況下で頑張っている人達(自分含む)へのメッセージとしてタイトルを付けました。

本当に、「幸せになりたい」という人間として基本的な願いすら踏みにじろうとする今の世の中だからこそ、そんな力に負けずに頑張って欲しい。

言葉は無力かもしれませんが、それでも本当に頑張って欲しい。

心から、そう願います。


……さて、話は変わりますが、前回の予告煽りを読んでからゴンの久々の登場が待ち遠しくてたまりませんでしたが、そんな笹原権二ファン(私含む)にとっても、今回は満足するエピソードでしたね。

買い物袋を抱えて機嫌良く作業着専門店から出た所をゲンさんに呼び止められてからのやり取りを見た時は、まさかゴンがここまで役に立つとは思いませんでした(ちなみに、土木関係の業種に就いた事がない自分ですが、今回の作業着専門店のモデルである「ワークマン」をはじめとする作業着専門店には時々行く事があります)。

今年に入ってからは、第276話「新たなる道を探して(前編)」で格安の倉庫を借りて来た事ぐらいしかゲンさん達の役に立っていなかったゴンでしたが、今回はその分を取り戻すかのように、紅熊建設をリストラされる社員の再就職先としてドバイの建設現場を斡旋するのですから凄いです(ここのくだりのゴンは、ゲンさんに「ひでえ労働条件じゃないだろうな?」と訊かれて「わいを信用しとくんなはれ」と答えていたけど、過去にゴンがしでかした幾つかの事を考えたら、ゲンさんが警戒するのも解るよなあ……)。

今回のラストで、平井社長に海外での日本人労働者の美点を語り、「わいは日本の財産は人やと思うとります」と言ったゴンの表情は、普段の彼のチャランポランさが嘘のように思えるくらい素敵でした(ゲンさんがこの言葉を聴いて「おまえの口から聞くと違和感があるけど」と言うのには少し笑ってしまったが)。

それにしても、ゴンの人脈が海外にまで広がっているとは、さすが「蛇の道は蛇」の男、侮れませんね……それと、ゴンのケータイの着信音の「ファンファカファーン」って音、似たような音で良いから何処かの着信音サイトにないかなあと少し思ってしまいました(ちなみに自分のアドエスの通話着信音は「黒電話」です)。

それともう一つ、今回ゴンが「これがワイのモットーでんねん」と言っていた「逆境こそチャンス!」という言葉が、気落ちしていた自分の心に染みました(本当に、自分もゴンのようにポジティブに生きてみたい)。


そして最後になりますが、以前からドバイという国名は知っていても、それが何処にある国なのかは不勉強にも知らなかったので、例によってGoogle経由でWikipediaの項を見ましたが、自分が思っていたのと全く違う近代化された都市だと知って驚くと共に、「言葉の問題さえなかったら、こんな息苦しい日本を飛び出して、こんな国で暮らしてみたい」と甘い考えを持ってしまいました(勿論現実は甘くないので一瞬思っただけですが)。


さて次回は、緑化事業のアイディアを元に紅熊建設の再建に力を貸そうとするゲンさんの前に難題が立ち塞がるらしいですが、ゲンさん達なら、そんな難題に怯まず立ち向かい、きっと胸のすくような解決策を見出してくれると信じています。

それでは、次回のゲンさん感想をお楽しみに。

※2008.11.15お知らせ※
改めて読み直してみて、言葉足らずだったり語の用法がおかしいと感じた部分の訂正をしました。
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プロフィール

須藤泰昭(すどやん)

Author:須藤泰昭(すどやん)
岐阜県西濃地方在住。
1970年生まれ。
趣味・テレビ番組の録画
    映画の廉価盤DVD収集
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飼い猫の「わく」ちゃんです。
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