2008.12.24.Wed / 19:44 
今日はクリスマスイブ、そして当然明日はクリスマス。

今回のゲンさん(『解体屋(こわしや)ゲン』)も例年通り一足早いクリスマスエピソードだったので、感想記事もそれに合わせて本日お届けいたします。

それでは、早速まいりましょうか。

ちなみに今回の「▽Open more.」前は、いつもと趣向を変えて、本エピソードにふさわしいYouTube動画を紹介させていただきます。

「Judy Garland-Have Yourself A Merry Little Christmas」
(ミュージカル映画『若草の頃(Meet me in St.Louis)』より)

(上のウィンドウで観られない方はこちらのリンク先をどうぞ)

『解体屋ゲン』
第306話「クリスマスに見る夢は…」
(ストーリー)

クリスマスイブの夜。
慶子さんは、部屋でくつろいでいるゲンさんに、佐倉義文という人から届いた小包を渡す。
ゲンさんが包みを開けてみると、中には「きよしこの夜」の曲のオルゴールと、ゲンさんに宛てた手紙が入っていた。
佐倉という名字に心当たりがある慶子さんがそれとなく訊くと、ゲンさんは送り主が自分の亡き婚約者・百合の父親だと認め、そのオルゴールは、二十年前にゲンさんが百合と交際を始めた頃にプレゼントした品だと言う。

その晩ゲンさんは夢の中で、オルゴールを百合にプレゼントした高校時代のクリスマスを思い出す。
だがゲンさんは、続いて現れた記憶の建設現場の鉄骨落下事故で、眼の前で息を引き取った百合に対して何も出来なかった自分を思い出し、その辛さにうなされる。

夢はまだ続き、ゲンさんは百合の死後にアメリカに渡った頃の、アリゾナでの出来事を思い出していた。
作業を終えて重機をトレーラーの荷台に固定していた若き日のゲンさんは、同僚らしき現地の男に連れられたビルの解体現場で、初めて爆破解体によりビルが一瞬のうちに崩れ落ちて行く瞬間を目の当たりにし、衝撃を受けた。
そしてゲンさんは、男を通じてそのビルの爆破を手掛けた爆破解体技師・ロスに自分を弟子にしてくれと直談判し、弟子を取らないので有名だったロスは、ゲンさんの真剣な表情から何かを感じ取ったようで、その場で彼を弟子にする。

それから五年の間、ゲンさんはロスの弟子として、ドイツ・ドレスデン、オーストラリア・ピルバラなどの現場で爆破解体の修業を積む。
そして香港・九龍城の爆破解体現場でロスは、ゲンさんにもう教える事は何もない、お前は立派なデモリション・マン(解体屋)だと言い、彼に起爆スイッチを押させる。
緊張した表情でカウントダウンののち起爆スイッチを押したゲンさんは、眼の前で崩れ落ちて行くビルを見ながら、突き上げる想いに駆られるように雄叫びを上げる。

また夢の場面は変わり、ゲンさんは、慶子さんやロクさん、ヒデ、光との出会い、そして鉄太くんの誕生を走馬燈のように振り返る。
そしていつものランニング姿のゲンさんが何もない空間の中で辺りを見廻すと、出会った頃と同じ姿の百合が彼に別れを告げる。
何時かまたきっと会えると言って遠ざかる百合に、眼に涙を浮かべたゲンさんは、まだ何も大切な事は話していないじゃないかと引き止めようとするが、「メリー クリスマス」の一言を残し、彼女の姿は光の中へ消えて行った。

クリスマスの朝。
夢から覚めたゲンさんは、起き上がると涙を拭う。
そこに鉄太くんが元気良く飛んで来てゲンさんに挨拶し、慶子さんも台所から朝食の準備が出来たと呼び掛ける。
鉄太くんを抱きながらそれに応えたゲンさんは、こたつの上に置かれたオルゴールに眼をやると、百合に呼び掛けるように「メリー クリスマス」と呟く。


(感想)
今回は、いくつもの回想で構成されたエピソードなので、正直言ってストーリー詳細と感想が纏めづらい内容でした。

しかも、発売日当日の記事でも少し触れたように、今回の回想を読み進んでいくうちに、ゲンさんが爆破解体技師になった切っ掛けだけでなく、慶子さん達との出会いや鉄太くんの誕生まで振り返っていたので、次第に「まさか予告にはなかったけど今回は最終回で、それでこうしてゲンさんの過去を振り返っているのか?」と不安になってしまいました(本当に、ラストまで読んで予告煽りがページ柱に書かれているのを見るまでは気が気でなかった)。

まあ、その心配は杞憂に終わったので、今回のエピソードが回想主体だったのは、ただ単に想い出のオルゴールがゲンさんを追憶に導いたのだと理解しました。


さて、ゲンさんが爆破解体技師になった理由については、過去にも何度か(短期集中版第3話「ぶっきらぼう」やレギュラー版第14話「ゲンの壁」など)触れられていましたが、今回ゲンさんが見た夢の中で、ようやくはっきりとした形で描かれたのが良かったです(長期連載に良くある事とはいえ、過去の記述と今回の記述に齟齬があるのは気になったが)。

ここのくだりで、ゲンさんを「カモン! グレイトなショーが始まるぜ!」と爆破解体現場へ誘った男が、そこへ向かう車内で「サムライボーイ ジャパンでなにかあったのか?」とゲンさんに問い掛け、「べつに…… WHY(なぜ)?」と答えるゲンさんに「いつも悲しそうに見えるからさ」と言う場面、そして爆破解体現場で崩れ落ちるビルを目の当たりにしたゲンさんが、爆破を担当した技師・ロスに弟子入りを志願した時の真剣な表情と「アイ・ウォント パワー!!」という言葉(太字の角ゴシックで強調されている)が印象に残りました。

「アイ・ウォント パワー!!(I want power!!)」。
日本語に直せば「力が欲しいんだ!!」という意味ですよね(簡単な英語だから大丈夫だとは思うけど少し自信ない……)。

やはりゲンさんは、ずっとあの事故(今回を含め何度もエピソードで触れられている、婚約者だった百合さんを失った鉄骨落下事故)で何も出来なかった自分を悔やみ、大事な人そして物を守る為に「力」が欲しいと思い続けて生きて来たのだと、改めて感じました。

そして、爆破解体技師としての修業を積んだゲンさんが、師匠であるロスに「GEN おまえが起爆スイッチを押すんだ」「『いいのか?』というゲンさんに)ああ この五年間よくがんばったな もう教えることはなにもない GENは立派なデモリション・マンだ」と一人前の技師として成長した事を認められ、「オレが…… デモリション・マン(解体屋)…………」(原文では「解体屋」「こわしや」とルビ)と呟く場面、そして起爆スイッチを押したゲンさんが、爆破によって崩れ落ちるビルを見て雄叫びを上げる場面を見て、この時ゲンさんは、ようやく求めていた「力」を手に入れたと実感したのではないかと思いました。

改めて書くけれど、今回のエピソードによってゲンさんの爆破解体技師としての原点を読む事が出来て、本当に良かったです。


……ここまで感想を読んだ方は、今回のエピソードで重要とも言える、ゲンさんの亡き婚約者・百合さんへのプレゼントのオルゴール、そして彼女に対するゲンさんの想いについて、まだ私が触れていない事に気付かれたでしょう。

実を言うと、ここのくだりに関しては複雑な感情があり、それを上手く文章に表す事が出来ないのです(いつも文章は下手じゃん……という突っ込みはさて置いて)。

勿論、ゲンさんは慶子さんと結婚するにあたって百合さんへの想いに区切りを付けていると思いますが(実際に、第121話『掛け違えたボタン(後編)』でゲンさんは、彼女の墓前で慶子さんへのプロポーズを決意した事を報告している)、慶子さんの立場を考えると、そんな事はないと解っていても、まだゲンさんが百合さんへ想いを残しているのではと不安になると思うのです。

ページ数の都合で仕方ないとはいえ、ワンシーンでも慶子さんがそんな不安を払拭したシーンでもあればすっきりしたのに、それらしき物がなかったのが引っ掛かったのです(ラストで目覚めたゲンさんに呼び掛ける慶子さんの表情に一点の曇りもなかった事で、脳内補完をして「慶子さんの不安は消えた」と考えればいいか)。

そしてゲンさんに対しても、上に書いたように一度はきちんと心の整理をしていたけど、心の奥底では今でも百合さんとの辛い別れの記憶から逃れられなかったのかと思うと、夢の終わりで遠ざかる百合さんにゲンさんが「待ってくれ! まだなにも話しちゃいないじゃないか! 大切な事はなんにも……」と眼に涙を浮かべながら呼び掛けるくだりが胸に突き刺さりました(確かに、気持ちのすれ違いなどで別れたのならともかく、突然の事故によって二人の絆が断ち切られてしまったのだから、そんな状況を経験した事のない自分には、どうこう言う資格はないよね……)。

上で「上手く文章に表す事が出来ない」と言いながら長々ととりとめもなく書きましたが、最後に一つ。

初めて読んだ時からずっと気になっているのだが(ストーリー詳細を書く為にじっくりと読み直したら更に)、夢の終わりでの百合さんがゲンさんに言う「いつかまたきっと会えるから」という言葉は、一体何を意味しているのだろう……(いや、別に深読みして心配になるような物ではないか)



さて、次回の第207話「不景気の処方箋」は、予告煽りによるとゲンさんが不況に喘ぐ商店街の為に何かサプライズを仕掛けるエピソードらしい。

どんなエピソードになるかはこれだけでは分からないけど、2008年締めくくりのエピソードに相応しい内容を期待しています(只でさえ次号の「週漫」「●の●」が巻頭そして特別企画という超不愉快仕様なのだから、ゲンさんはじめ他の作品で楽しく年の瀬を過ごしたいよ……)。

それでは、次回のゲンさん感想をお楽しみに。

そして皆様、メリー・クリスマス!
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プロフィール

須藤泰昭(すどやん)

Author:須藤泰昭(すどやん)
岐阜県西濃地方在住。
1970年生まれ。
趣味・テレビ番組の録画
    映画の廉価盤DVD収集
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飼い猫の「わく」ちゃんです。
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